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    占星術洋書レヴュー#07: Jean-Baptiste Morin"Astrologia Gallica Book 21"

    • 2018.04.14 Saturday
    • 05:00

    まず著者ジャン=バティースト・モラン(1583〜1656)について。前回レヴューさせていただきました、ジェイムス・ホールデンの占星術家人名辞典によれば著名な医師、数学者、天文学者、占星術師で、35歳頃より占星術に真剣に取り組み始め、45歳頃より占星術に人生を捧げるに至った人物、以降高位聖職者で政治家のリシュリュー枢機卿など多くの偉人に仕え、占星術師として働いたのだそうです(※1)。なおホールデン自身、モランが30年の歳月をかけ書き上げた−そして生前、その出版に氏自身がまみえる事のなかった−大著"Astrologia Gallica(=ラテン語で「フランス占星術」の意)"全編26巻中第13〜17、19、22〜26の書を英訳、出版なさっている事を記しておきます(レヴュアーいわく、自身が翻訳した図書の筆者を説明するプロフィール文章は、一際特別なものになっているかもしれません)。ちなみになぜ、本書タイトル部分のみが英訳されず、ラテン語のまま残されたのかは、レヴュアーの知る限り不明ですがまぁ、ラテン語のままの方が何となく恰好良いという気がしない事もない、と思うのはレヴュアーだけでしょうか。

     

    上記大著中、第21の書(サブタイトルは「モラン流ホロスコープ解釈法」といった処でしょうか。"Morinus"は"Morin"のラテン名)である本書はリチャード・バルドウィンの英訳(※2)。レヴュアーいわく、1980年に始まる(※3)古典占星術復興運動に先立つ1974年−ここでは詳しく触れませんが、1970年代というのは20世紀占星術において激動の時期の一つであるとレヴュアーは考えます−時点で、かような図書を英訳なさったバルドウィン、リリースに踏み切ったAFA(アメリカ占星術連盟)各位の慧眼ぶりはすばらしい。なおモランの手法は、フランスの多くの占星術師達の間では、21世紀現在の今でも学ばれているのだそうです(※4)。

     

    "Astrologia Gallica"自体、占星術ならびにラテン語の双方が斜陽へと傾きつつあったと言われる17世紀半ばにリリースされた著書だった事もあり、多くの人々に認知されるに至らなかった(※5)そうですが、たとえば「(著者モランの)才能が欠如していたわけではなく、タイミングに恵まれず("poor timing")無視されていたのではないか」(※6)とのロバート・ハンドの言葉をも鑑みると、モランの本書に内在する、占星術的見地から見た本質は、時代による風化に屈する程度のものではなかったのでは、とレヴュアーは考えます。ちなみにハンドは本書全26巻中、占星術を支える自然哲学について書かれた第1〜10の書(=2018年時点で英訳公式図書レヴュアー未確認)の重要性をも明言なさっています(※7)。

     

    内容は第1部が"primum caelum(恒星の領域)"、天体、恒星などについて、第2部がサブタイトルにあるモラン式チャート解釈手法についてで、17世紀時点で権威とされていたクラウディウス・プトレマイオス(プトレミー、100〜178)、ジロラモ・カルダーノ(1501〜1576)などの手法を批判、一般的なシグニフィケーター(例:太陽は父親、月は母親をそれぞれ司る、等)よりもアクシデンタル・ルーラー(例:第4、10ハウスやそれらの支配星の状態が両親を司る、等)を尊ぶ「普遍性を有する合理的手法("universal rational method")」のエッセンスがこの第2部では詳述されており、天体配置やハウス・ルーラーに基づくリーディング法、ハウスにある一つの天体、ハウスに天体が二つ以上ある場合の解釈法、あるハウスのルーラー天体が他ハウスにある場合の解釈法、イグザルテーション、トリプリシティ、イグザイル(=デトリメント)、フォールにある天体の解釈法、アスペクト(≒「他の11ポイントを通じての関わり」)等が論点となっています、全144ページ。

     

    レヴュアーいわく、著者が唱える「合理的手法」が時代を超え「普遍性を有する」か否かは、読者それぞれの判断に委ねられる部分もあるでしょうけども、21世紀現在でもハウスの支配星についてのリーディング、たとえば「第○ハウス・ルーラーの天体が第○ハウスにある」場合の解釈じたい、大いに論じられた図書はそう多くはない(※8)という事もあり、モランの解釈法を現代のハウス解釈、コンテキストに沿った形で(特に第6、8、12ハウスなど)捉え直してみるのも本書の有効な利用法の一つ、というのもあるかもしれません。

     

    ただその一方で、プトレミーの手法のみならず、エジプト、アラブ等いにしえの占星術家達の手法の多くを批判、ならびにそれゆえのそれら手法の省略を施したうえで、自身の手法の優越性を「論理的に」証明しているとされる部分は、古典占星術復興運動を経、獲得された、21世紀今日ならではのより大きな歴史観・視点(≒ギリシャ時代やアラブ隆盛時代の手法も大いなる財産である、という視点など)からいえば、著者が述べる程は充分証明されたとは言い難い、というのもあるようで(※9)、この部分はいわば時代ゆえの(占星術のみならず宗教・政治・文化をも含めての)制約が幾つも積み重なったゆえ、と考えて良い面があるとレヴュアーは考えます。

     

    そういえばモランと同時代を生きたウィリアム・リリー(1602〜1681)も、"Christian Astrology"(『キリスト教占星術』)が敬意を表すべき大作である事は前提とは申せ、ネイタルを扱った記述の一部では上記、モラン同様の−モランが示したような批判は無いが−省略等が見られ、たとえばペルシャ占星術を起源とし、アラブ占星術で大いに用いられた未来予知法であるフィルダリアは、天体ならびに天体の組み合わせ、それらが表す期間("planetary period")など基本事項を説明するだけで随分紙面を割くはずなばかりか、夜生まれの出生図の持ち主の場合、ノード軸をいずれの期間に当て嵌めるかといった、占星術師ごとでの意見の相違までをもわきまえ説明するとなれば、相応のページ数を費やす(グイド・ボナティ(1210〜1296)、ヨハン・ショナー(1477〜1547)など、リリーが大いに参照した占星術文献著者らは費やしています)ものと思われますが、リリーは数行しか費やしていません(※10)。細かい話ではありますが、これなども上記、時代ゆえの制約の影響を受けた事象であるとレヴュアーは考えます。

     

    まぁそれらを踏まえてもモランの本書は有益であるとレヴュアーは考えます。チャートは一枚も収録されていませんが、たとえばホロスコープ解釈説明を踏まえての自身のネイタル・チャートを用いてのケース・スタディ(p.61, 67, 78, 85, 94, 100, 122など)などは殊に興味深く、長じて本書を踏まえての続編であります未来予知編"Book 22"(プライマリー・ディレクションについて)、"Book 23"(レヴォリューションすなわち四季図、リターン・チャートについて)、"Book 24"(プロフェクション、トランシットについて)などを読む楽しみにも繋がる、ともいえるでしょう。

     

    However, we must first ascertain whether a planet placed in a given house, and ruler of another, always combines the essential meanings of both houses(中略); this point is of the greatest importance in making judgements.

     

    (意訳)しかしながら、あるハウスにありつつ、同時に他ハウスのルーラーでもある天体が、滞在するハウスならびに支配するハウス、両方のハウスの本質的意味を互いに結びつけた象徴として働くか否かを、まずは確かなものとしなければならない(中略)以上がホロスコープを読み判断するうえで最も重要な点である(p.77)。

     

    最後に翻訳について。レヴュアーはバルドウィンの、占星術家としてのプロフィールにつき詳らかではありませんが、上掲"Book 22"、"Book 23"、"Book 24"等ホールデン英訳図書に比べ、読みにくいとか判りにくい処があるとかは一切なかったので、おそらくホールデン同様、バルドウィンも占星術の歴史ならびにホロスコープ解釈実践、双方に通じている翻訳家なのであろうと判断しました。プトレミー、カルダーノなど、モランが頻繫に参照・引用なさった占星術家の図書も読んだうえで翻訳なさったのではないかとも思います。また、学ぶうえでの必要最低限の情報のみが書かれた序言からも、バルドウィンの占星術に対する真摯な姿勢は伺えるとレヴュアーは考えます。

     

     

    ※1…James Herschel Holden"Biographical Dictionary of Astrologers"(AFA 2013)p. 502〜503参照。なお数学者として、かのルイ13世の許で働き、ルイ14世の出産に立ち会いもなさったそうです。

     

    ※2…レヴュアーいわく、本レヴュー作品リリースと時を同じくする1974年、ロバート・ゾラー等多くの占星術家に占星術の手ほどきを施した、ゾルタン・マンソンも本書英訳図書をリリースなさっているのはじつに興味深い("Astrosynthesis/The Rational System of Horoscope Interpretation/according to Morin de Villefranche", New York 1974)。ちなみに"Astrologia Gallica Book 18"を翻訳なさったアンソニー・ルイス・ラブルーザ(=拙占星術洋書レヴュー#01で取り上げさせて頂きました、"Horary Astrology Plain & Simple"の著者)は左記図書序言でこのゾルタン・マンソンに対し献辞を捧げています。

     

    ※3…John Lee Lehman"Classical Astrology for Modern Living: From Ptolemy to Psychology & Back Again"(Schiffer 1996)p.10ならびに拙『占星術洋書レヴュー#05: Joseph Crane"Astrological Roots: The Hellenistic Legacy"』脚注2参照。

     

    ※4…Astro Databankによれば、モランのネイタル水星は水瓶サインにあり天王星とコンジャンクション、天王星の度数は水瓶サイン23゚ (数え24゚)にありサビアン・シンボルは「情熱に背を向けて自分の経験により教えている男」。松村潔先生によれば「これまで世の中に普及している教育法は、山羊座的な価値観の元で作られたもので、もちろんマニュアルもあり、教える人もたくさんいる信頼性の高いものです。ところが水瓶座はもっと未来的なものとして、21度以後、さらに改革的な方針を打ち出しました(中略)水瓶座には、ご当地にこだわる山羊座の歯止めがないので、理念が宇宙的に拡大していき壮大になります。そして山羊座の保証がなく、つまりはアカデミックな認証がない状態で教えています」(松村潔『完全マスター西洋占星術供p.476)、すなわち17世紀フランス占星術界に於いて、モランの説は先達からの権威づけ(≒プトレミー、カルダンらに依拠した占星術)を多くは伴わぬ、時代を先取りし(過ぎ)たものだったかもしれない、というふうに考えて良いと思います。

     

    もちろん。この度数を応用的に考え、獅子サイン数え24゚ (上記度数に対し、正確なオポジションの度数、なりふり構わず集中して取り組む姿勢(=水瓶数え24゚ シンボルにある、「情熱」にすっぽり嵌った姿勢)を表す度数)、双子サイン数え24゚ ならびに天秤サイン数え24゚(上記度数に対し正確なトラインの度数、知的な遊び、膨大な情報提供に関わる度数ならびに際限なき積極的受容性を表す度数)などの影響をも考えて良いと思います。一つの度数そのもののみならず、その度数を幾何図形的に補強している場所の性質を付加する事により、その度数の性質を一際掘り下げ得る、というのが松村潔先生の説にございます。幾何図形の中でも三角形の場合、広げていく、拡張する、勢いをつけてゆくという性質をその度数に対し加える事になり、そこに天体があるか無いかは問題にはならない、というのが先生の説のベースにあるものとレヴュアーは考えます。120゚ のアスペクトというのは、そもそも三辺ある正三角形の一辺に過ぎないという考え方に基づけば、三辺総てが動く、すなわち三辺を支える三つの度数総てが働くのが理想、という風に考えても良いと思います。

     

    ※5…James Herschel Holden"Biographical Dictionary of Astrologers"(AFA 2013)p.503参照。序でに申せば本書訳者バルドウィンは、モランの努力は「科学の台頭が迫っていた時代において、時機を逸したものであった」としています。

     

    ※6…Robert Hand Interview Recorded by Garry Phillipson 7th September 1997  http://www.astrozero.co.uk/articles/Robert_Hand_97.pdf 参照。

     

    ※7…同上。ちなみにプライマリー・ディレクションを論じた"Astrologia Gallica Book 22"(Trans. by J.Holden, AFA 1994)には補遺として"Book 2"抄訳が収録されています。

     

    ※8…松村潔『占星術最新入門』(学研)p.195〜247 には「第○ハウスの支配星が第○ハウスに」ある場合を述べた、144通り(=12のハウス×12のハウス)のクックブック形式解釈文章が収録されています。

     

    ※9…Jean-Baptiste Morin"Astrologia Gallica Book 13, 14, 15, 19"(Trans. by James Herschel Holden AFA 2006)収録"Book 15"p.5参照。

     

    ※10…"Christian Astrology"にたいする、ラディカルな迄の批判を含む、碩学による文章は國分秀星『ホラリーに関する誤解(4)』http://www.kokubu.com/astrology/mis4.htm ならびに『ホラリーに関する誤解(5)』http://www.kokubu.com/astrology/mis5.htm 参照。またモランがフィルダリアを論じている箇所は"Astrologia Gallica Book 23"p.126〜127参照。

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