占星術洋書レヴュー#06: James Herschel Holden"Biographical Dictionary of Western Astrologers"

  • 2018.03.17 Saturday
  • 05:00

拙著電子書籍『占星術家年鑑』(説話社 2015)執筆時、参考文献としてじつに、大いにお世話になった、幅約22×高さ約29×厚さ約5僉⊇鼎橘2,200g(=2.2!)、総ページ数777ページを誇る占星術家事典(American Federation of Astrologers (AFA) 2013)であり、上記拙著執筆完了以降ゆっくり時間をかけ、一度は完読できたのでレヴュー…とは申せ占星術に携わり、占星術の歴史ならびにそこに登場する先達の方々に興味を持ち続ける限り、今後も何度も何度もお世話になるであろう一冊でもあるとレヴュアーは考えます。

 

紀元前2世紀頃〜20世紀中頃(※1)出生の、nヶ国(数えていませんが、21世紀現在の英語圏の国々だけではございません)、2,200人以上の占星術家−実際には同一人物の呼び名のヴァリアント等も含むので、左記人数には及ばないかもしれませんが−の基本情報や主だった著作リストを収録。著者はホロスコープを扱う(="Horoscopic")占星術とその歴史、ならびにそのフィールドでの重要人物を旧著"The History of Horoscopic Astrology"(AFA 1996)で既に一度まとめなさっていますが、そこで収録された人数を本著は大幅に超えています。

 

上記拙著でも触れましたが、占星術家の出生・没年や著書にかんする出版の詳細など、データ関連の細かい処に書きかけや空白部分、記入されるべき文字の欠落があり、また巻末索引や参考文献リストも収録されていないのですけども、これはホールデンが−自身の死が近いのを悟ってなのか−存命中の出版・リリースに踏み切った事による、行き届かなかった部分を表すものとレヴュアーは考えます(ホールデンの没年は2013年)。ちなみに晩年のホールデンの著書・翻訳書出版ラッシュ(※2)は凄まじいものがあり、ポーフィリー(234〜304)やアレキサンドリアのポール(4世紀)など、古代ギリシャでの重要な占星術師を紹介する翻訳やジュリウス・ファーミカス(285〜360)の大著"Mathesis"の全訳(620ページ!)などがリリースされました。

 

古代ギリシャ語、ラテン語、フランス語、ドイツ語等、複数の言語に通じているホールデンは上記以外にも、古典占星術写本などの英訳を多くなさっており、また1982年すなわちオリヴィア・バークレーらがウィリアム・リリー(1602〜1681)著"Christian Astrology"のファクシミリ版(Regulus 1985)をリリースする前の時点で、占星術史上最古のハウス・システムとされるサイン・ハウス・システム(="Sign-House System"。1990年代、ロバート・ハンドがホール・サイン・ハウス・システム"Whole Sign House System"と命名したものと同じシステムで、ハンドの著名さゆえか、ハンド命名名称である「ホール〜」の方が人口に膾炙しているように見受けられるシステム。実はホールデンの命名の方が10年以上も早いのです)をいち早く紹介なさるなど(※3)の功績もあり、すべからく古典占星術復興といえばロバート・ゾラー、オリヴィア・バークレー、リー・レーマン、プロジェクト・ハインドサイトなどの功績を真っ先に思い出す人も多い(レヴュアーもですが)中、じつはホールデンも復興運動の早い時期からの大功労者なのだ、という事に改めて気づかされるというのもあると思います。

 

かようなわけで、本書は事典として重宝するのはもとより、ホロスコープを扱う占星術、すなわち実践占星術ならびにその歴史に精通している、古典占星術英訳図書をも有する著者ならではの、古典から現代までを通じての歴史観までもが背後に見て取れる読み物、という意味でも金字塔的に面白い一冊であるとレヴュアーは考えます。

 

上述占星術家達の履歴の中には、彼らが自身の人生・時代を一所懸命生きたなかでの興味深いエピソードなどもてんこ盛りに書かれているのですけども、それも本書の大きな魅力の一つです。それらエピソードなど記載項目の中から、レヴュアーなりに以下、箇条書きで幾つかご紹介いたしますと…

 

・ページ数が多く割かれている占星術家はアブ・マシャー(787〜886)、ヘルメス・トリスメギストゥス(古代ギリシャ時代)の二人が5ページ、ジャン・バティースト・モラン(1583〜1656)が6ページ、クラウディウス・プトレマイオス(プトレミー、100〜178)が7ページ、ジュリウス・ファーミカスが12ページ、以上5名がトップ5(ホールデンが自身に6ページ割いているのを除く)。モランとファーミカスはホールデン自身、彼らの著書の多くを翻訳なさっているので、彼らへの思い入れの強さがページ数、文字数にも顕れたのかもしれません。

 

・未来予知を行い、見事当ててみせた占星術家の記載も多いですが、21世紀現在の欧米など以上に、生き抜く事じたいが困難な国、時代を生きた占星術家が多いせいもあってか、ホールデンが紹介した、語り継がれ残ったそれら予知は生死に関わるものが多いようにレヴュアーには思われます。

 

・いつの時代、どんなジャンルにもライヴァル同士、あるいは実際にはそうでなくとも、周囲からそのように見なされる関係というものはあると思います。上記モランとプラチドゥス・デ・ティト(プラシーダス、1603〜1668)の二人もハウス・システムの選択ならびにソーラー・リターン・チャートの有効性の二項目を巡り意見の対立があったゆえもあり、互いに切磋琢磨する関係にあった部分もあるようです。これら二項目の落着については、ハウス・システムの件ではプラシーダス(プラシーダス・ハウス・システムは18世紀に至った際、ジョン・パートリッジ(1644〜1715)が多くの占星術家達にとって利用しやすい室項表を作成・普及に成功させたため、以降、モランが推奨したレジオモオンタナス・ハウス・システム以上に用いられるようになったようです)、ソーラー・リターン・チャートの件ではモラン(モランが推したソーラー・リターン・チャートの有効性・支持を唱える占星術家は21世紀現在も多いでしょう)がそれぞれ「勝利を勝ち取った("won out")」(※4)とホールデンは1994年時点で書いており、さしずめ両者は「痛み分け」でしょうか。

 

・上記拙著でも書きましたが、本書に収録された日本人占星術家は、ホールデンと同じAFA(アメリカ占星術連盟)に所属なさっていた石川源晃ただ一人です。石川源晃の著作リストに"Ensyuu Senseigaku Nymon(ママ)"とあるのは微笑ましいです。

 

・占星術家の最期も様々ですが、ここではロバート・デ・ルース(=かのノエル・ティルも、ソーラー・アークなど未来予知技術検証の過程でプライマリー・ディレクションを研究なさる際手に取った"Complete Method of Prediction"(Stationers Corp. 1935、レヴュアーamazon.co.jpでレヴュー済み)の著者)の最期をご紹介いたします。しばしば自身の死期を予知しようと試みなさっていた氏が、ウィルス性肺炎を患い心身共回復に努めるべく療養施設で過ごしておられた折、氏の許に三か月後に開催の、ボストンでの占星術大会(="convention")での講演依頼が舞い込んだそうです。講演依頼の手紙を読んだ氏、奥様にいわく「うん("Yes")、ボストンに行くよ!」−この発言の一ヶ月半後に氏は亡くなられ、上記講演出演も実現しませんでしたが、レヴュアー推測するに健康状態にかかわらず、ボストンでの大会に向け最善の準備に取り組んだであろう氏にとって上述、自身の死期の予知の件などは忘却のうちにあったかもしれません…なおホールデンいわく、氏の健康状態を永く傍で見守り続けて来た、氏と同じ占星術家でもあった奥様は、実際の氏の最期の一年前の時点で氏の最期の時機を予測なさっていた、と。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

"To Those Who Came Before Us. Homage!"(訳: 私達の先人達にオマージュを!)(※5)というフレーズは、ロバート・ハンドが作成なさった、歴代占星術家達へのオマージュyoutube動画中、最後に掲げられた言葉ですが、ホールデンが20年の永きに亘り本書執筆、ならびにそのためのデータ収集を弛まず継続なさった、その推進力に込められた本質にもハンドの上記言辞同様、あるいはそれ以上のものが込められていたのでは、とレヴュアーは考えます。

 

 

※1…原則、1936年までの出生の占星術家を氏なりに網羅なさっていますが、1936年以降出生でもチャールズ・ハーヴェイ(1940〜2000)、ハワード・サスポータス(1948〜1992)など、本書出版時点で既に亡くなっておられる占星術家に限り、1936年以降出生でも収録、という例外はあるようです。ちなみに古典占星術師であるホールデンが、自身よりも約二回りも若い、心理占星術師として名高いサスポータスについて「彼はエイズで亡くなったが、彼の死は彼の友人達にじつに惜しまれた("much regretted by his friends")」と書いておられるをレヴュアーはよく覚えています。

 

※2…上記ポーフィリーなど幾つかの翻訳は1980年代時点(!)で英訳されており、氏に近い占星術コミュニティ内限定で配布されていたそうです。それらに対し修正・加筆などが施され2000年代末公式リリースされたという事ですね。

 

※3…James Herschel Holden"The History of Horoscopic Astrology"、p.94参照。本レヴュー図書ならびに左記ホールデンの旧著を読むと、1990年代にプロジェクト・ハインドサイト(=ロバート・シュミット、ロバート・ハンド、ロバート・ゾラー他一名で構成のユニット)が大規模な翻訳活動を通じ明らかにした、と思われた歴史的事象の多くか、あるいは幾分かをホールデンは既にご存知だったのがわかります。

 

※4…同上、p.173参照。

 

※5…"Astrologers Gallery by Robert Hand" https://www.youtube.com/watch?v=XSeE-w5vtLw (2014)

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