占星術洋書レヴュー#04: John Lee Lehman"Classical Solar Returns"

  • 2018.01.13 Saturday
  • 05:00

未来予知の手法の一つである、ソーラー・リターンが論じられた図書(スチファー社、2012年刊)。

 

序言では、ソーラー・リターン・チャート作成の際、場所は出生地、現住所、ソーラー・リターン時点で居る場所、いずれを用いるか、また数ある未来予知技術のなかで、信頼のおけるものはいずれなのか、などについて述べられています(その過程で著者ジョン・リー・レーマンは本文脚注で"traditional(伝来の)"ならびに"classical(古典の、伝統的な)"、二つの語を「交換できるように(interchangeably)」用いていることを私達読者に注意を促しています)。

 

第1章はソーラー・リターンの歴史について。以下、レヴュアーなりに要点を箇条書きで列挙いたしますと、

・古代ギリシャ、ヘレニスティック時代にソーラー・リターン(=17世紀まではレヴォリューション(=回転)・チャートと呼ばれていました)という技法は存在したか、について。

 

・アラブ世界で占星術が隆盛した時代(=8〜10世紀)はどうであったか。ここで著者はソーラー・リターン同様、年運を推し測る未来予知技術であるプロフェクションとの比較をも論じています。

 

・中世ラテン時代、ならびにモダン(と著者は書かれていますが、ジロラモ・カルダーノ(1501〜1576)やウィリアム・リリー(1602〜1681)らの説が紹介されているので16、17世紀を指すようです)、18〜19世紀はどうであったか。

 

・20世紀に活躍した、ソーラー・リターンを論じた著書を有する占星術家達(例: マリー・シェア。シェアのソーラー・リターン本はamazon.co.jpでレヴュアーレヴュー済み)の意見はどうであったか。

 

以上はネイタル・チャート上の太陽・月・水星の三天体を乙女サインに有する著書ならではの鋭い問題提起、ならびにそれらに対する鋭い突っ込みが(いつもながら)読み応えがあるとレヴュアーは考えます。

 

第2章からはケース・スタディを用いてのチャート・リーディングに入ります。第3章は恋愛・結婚ならびに人間関係について。

 

著者のソーラー・リターン・チャート解釈手法の特徴の概要を以下に述べますと、

・ハウス・システムはレジオモンタナス・ハウス・システムを採用。

 

・ソーラー・リターン・チャートのみでの解釈ならびにネイタル・チャートとの比較、二重円を踏まえての解釈、双方を行う。

 

・ジョン・ガドバリー(1627〜1704)らのアフォリスム(箴言)を箇条書きで挙げ、留意。なお著者は左記アフォリスムなどいにしえの先達の言葉を現代の私達の時代・文化のコンテキスト(文脈)に変換し活かすことをも忘れていません。

 

・チャートでの目立った配置(例: アングルに乗る天体、ネイタル・チャートの天体にアスペクトする天体、水星・金星はネイタル・チャートでのそれらと同じサインにあるか否か、etc)を列挙。

 

・各天体のディグニティに留意。レーマンの場合、トリプリシティを獲得しているか否かにつき(他占星術家に比し)特別視なさるのは旧著"Essential Dignities"(Schiffer 1989、レヴュアーamazon.co.jpでレヴュー済み)以来変わりません。

 

全章を通じネイタル、リターン双方を合わせ130ものチャートが収録され、かつ著者の解釈が付されているのは圧巻。レヴュアーなどは著者の解釈(=古典占星術ベース)を拝読しつつ、自身なり(=現代占星術ベース)にもそれらを読みいわばチャート読みの練習として利用もさせてもらいました、また今後もさせてもらうでしょう。

 

仕事・金銭をテーマとした第4章冒頭では、「仕事をする必要がないのであれば、わざわざ一所懸命働く道を選ぶだろうか」なる疑問を持ち出し、まずはどんな仕事であれ労働に対する情熱ありきなのでないか、それによりどれだけの稼ぎが生み出せるか否かでないか、だがあいにく伝来の(=traditional)占星術(ここではグイド・ボナティ(1210〜1296)、リリー、ガドバリーの説が具体例として述べられているので13〜17世紀か)に於いては、それら労働ならびにそれらに対する情熱とが互いに絡み合わされるさまがトピックとして論じられた形跡は見出せなかったとし、上記時代における労働、価値交換の手段としての財産(=土地)・金銭などに対する考え方、社会条件についての歴史を理解する必要がある旨が2ページに亘り論じられたうえで冒頭「仕事とは」という疑問に戻り、占星術的考察に入っています。

 

著者の上掲「一般的にこのように見なされている〇〇は、果たしてそうか」と疑問に思い検証して見せよう、なる姿勢はたとえば"Classical Astrology for Modern Living"(Schiffer 1996)で古代ギリシャ、ヘレニスティック占星術において有効な技法とされていたセクト(Sect)がボナティ、リリー、ガドバリー、ジョン・パートリッジ(1644〜1715)と徐々に時代が下るにつれ、有効とは見なされなくなっていったという歴史的事実が存在する事に疑問を持ち、左記先達のセクトに対する評価のいずれに妥当性があるのか、なる提言を起こし、かのゴーグラン夫妻の研究成果であるゴーグラン・セクター(Sector)ならびにそれに基づく著者自身による検証結果(文章・グラフ・表)までをも持ち出し論じなさった事などをも思い出せば至極当然といえるものとレヴュアーは考えますけども、本書ではセクトなど占星術での技法のみならず、より大きなテーマ(仕事・金銭)そのものにまでメスを入れておられる、という事ですね。

 

ここではジョン・ガドバリーの箴言の多くで第2ハウスのみならず第1ハウスが重要視されていることに着眼、一本目のケース・スタディ(=宇宙飛行士バズ・オルドリン)でさっそくガドバリーの箴言の検証を含めてのリーディングに入っていますが、レヴュアーとしては紙面も限られているかもしれないこの場面でなぜ上記ガドバリーの箴言を著者がわざわざ出してきたか、その動機の方にもフォーカスしつつ読み進めるというのもありかと存じます。

 

What may perhaps be the most surprising about these aphorisms is Gadbury's reliance on the Ascendant with respect to financial gain or loss. Clearly, it's not enough to have things working in the 2nd if the Ascendant is afflicted. (p. 91)

 

(意訳)これまで述べてきた(ガドバリーの)箴言について、恐らく私達にとって最も驚きに値するかもしれないのは、ソーラー・リターン・チャートで財産の増減を読む際、ガドバリーがアセンダントに重きを置いていることです。アセンダントがハード・アスペクトなどで損じられていた場合、第2ハウスで働いている象意を受け取ることが充分とはなり得ない、という彼のロジックは至るところで明白です。

 

レヴュアーいわく、この章のみならず、いずれの章、いずれのテーマ(恋愛・結婚、人間関係、リロケーション、学業、名誉を得ること、健康問題、人生の転換の年、本人ならびに肉親など親密な人々の死)においても上述テーマそのものに対する洞察→先達の意見のなかで着眼なさったアフォリスムなどの提示→膨大な知識に支えられつつ自身の経験・実践に基づくケース・スタディ検証(=レヴュアーいわく、ホラリー占星術に対するアンソニー・ルイスの姿勢を思い出す)→先達の言葉に対する賛否をも含めての結論・まとめという流れでまとめられていますが、著者が発するチャート解釈上の言葉の数々の中には、ちょうどレーマンがガドバリーらの箴言を語ったように、今後占星術を学ぶであろう21世紀の学徒に語り継がれるのでないか、と思われるものもあるとレヴュアーは考えます−が箴言になり得る知識以上に重要なのはもちろん「ネイタルならびにソーラー・リターン・チャート一つひとつをじっくり読む」こと、チャートを読むことは箴言やパターン化したマニュアルのみでは充分でない場合もある事を、研究のみならず実践占星術師でもある著者は熟知なさっているでしょう、この点についても読み応えがあるものとレヴュアーは考えます。

 

第12章はレーマンが「これまでテーマごとに論じてきましたが、それが本書の目的という訳ではない」(p. 216)と称し一人物(フランクリン・ルーズベルト)の人生のうち41年分のソーラー・リターン・チャートをひたすら読み続ける圧巻の章(全67ページ!!)。ソーラー・リターン・チャート一つひとつのみならず、それらが連続体として織りなすストーリー、人生の流れにまで言及なさっています。第13章は総まとめ。

 

充実の巻末付録は用語集、エッセンシャル・ディグニティ表、カルダーノ、ジャン=バティースト・モラン(1583〜1656)、ガドバリー三者の箴言の要点をまとめた表、用いられた総てのチャートでの配置(例: 太陽が第1ハウスにある、etc)のインデックスなど。

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  • 2018.01.21 Sunday
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