占星術洋書レヴュー#02: Robert Hand"Essays on Astrology"

  • 2017.11.18 Saturday
  • 05:00

ロバート・ハンドが占星術雑誌に発表なさった記事、占星術講座でお話しなさった講義を文字起こしした文章など13編がまとめられた一冊でウィットフォード・プレス社より1982年刊。13にわたる「占星術のエッセイ」は多岐にわたります。

 

第1章、最初に収録されたエッセイ(=1972年、すなわちハンド29歳時点での作品)のテーマは月相で、月のサイクルを論じたディーン・ルディアの名著"The Lunation Cycle"(Aurora Press 1967、レヴュアーamazon.co.jpでレヴュー済み)に氏が出会う前に書かれたものなのだそう。

 

この第1章の冒頭、ならびに第8章、人間の成長にかかわる危機が論じられたエッセイ冒頭文章の二つは、あたかもそのルディアが書いた文章(ルディア節!)を読んでいるかのよう。ハンドも1970年代時点で活躍なさっていた多くの占星術家同様、ルディアの影響を大いに受けておられたのだな、と思わず微笑んでしまうほどです。ちなみにハンドはヘルメス・トリスメギストゥス(???〜???、古代ギリシャ時代)に始まる、過去の占星術師達に対する自身のオマージュ動画(2014年)のなかで、19世紀末以降に活躍した占星術師としてはこのルディアにのみオマージュを捧げていました。

 

第3章、水星にかんするエッセイ、ならびに第4章「マレフィック(天体)を巧みに扱う」エッセイは、氏の名著"Horoscope Symbols"(Schiffer 1981、レヴュアーamazon.co.jpでレヴュー済み)でのサイン、天体、アスペクト、ハウスについての深く鋭い洞察の数々が蘇ってくるかのようで、読んでいてぐいぐい引き込まれてしまうほど。たとえばトランシットの土星についての件りでは、それがネイタル・チャートの天体や感受点に対しアスペクトを取る際は「気分が良い」ということはまずない、というのはなるほどもっともであろうし自身もそれを楽しむということはないが、としたうえで、

 

...but I have to acknowledge that growth and knowledge come about through Saturn. Some people enjoy being taught hard lessons, other people don't, but that is not the intrinsic problem with Saturn. The intrinsic problem is that it makes you think that it is real. You lose perspective and any account of where you are. (p.42)

 

(意訳)ですが、成長する事ならびに己れを知る事の二つは土星を通じてやってくる、というのも認めざるをえないでしょう。厳しいレッスンを受けることを楽しむ人もいれば、そうでない人もいます。ですがそれは土星にかんしての本質的な問題ではりません。土星にかんしての本質的な問題はすなわち、受け入れるべき現実がどのようなものであるかがわかるということです。私達は将来の見通しや前途、そして自身の立場の根拠を(一旦は)失うのです。

 

ちなみに氏のネイタル土星は双子サイン数え09゚ にあり、松村潔先生はこの度数を「最も鋭い知性」を表す度数、と呼んでおられますが、PCが普及する以前の段階での占星術ソフトの開発から古典・現代占星術、双方の統合をなし得る数少ない存在と呼ばれる事に至るまで、占星術という巨大な知恵の宝庫において膨大な貢献をなしてこられたハンドは左記、松村潔先生の説を身をもって証明なさっている人物の一人だな、とレヴュアーは常々考えております。

 

第11章は、古代ギリシャ、ヘレニスティック占星術などでおなじみのドデカモリーがテーマ。マーカス・マニリウス(15〜???)、クラウディウス・プトレマイオス(プトレミー、100〜178)、ジュリウス・ファーミカス(285〜360)といった、1970〜1980年代時点で英訳図書で読み得た、古代占星術著者の文章が引用文章として動員され論じられていますが、本書刊行の約10年後、1990年代にはハンド自らラテン語やギリシャ語を学んだうえで上記プトレミー、ヴェッティウス・ヴァレンズ(120〜175)、マシャアラー(740〜815)、グイド・ボナティ(1210〜1296)、ヨハン・ショナー(1477〜1547)など、占星術史に残る「巨人」達が著した原典等文献翻訳に取り組みなさることになろうとは、このエッセイ執筆時点でのハンド自身も思いも寄らなかったかもしれません。

 

第13章、歳差運動についてのエッセイは占星術雑誌"The Mountain Astrologer"2014年10/11月号(第177号)で、約30数年の時を隔てての秀逸な続編"The Precession of the Capricorn Solstice & the Importance of 2017"がリリースされたのが記憶に新しいです。

 

多くの占星術図書、学術図書の引用ならびにそれらに対する氏の考察を読み進めていると、著者が執筆なさっていた1970〜1980年代という時代の占星術界の流れや歴史がうかがえる処も本書ならではの愉しみ、とレヴュアーは思います。

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